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角換わり棒銀

テーマ図

初手からの指し手

▲7六歩 △8四歩 ▲2六歩 △3二金 ▲7八金 △8五歩
▲7七角 △3四歩 ▲8八銀 △7七角成 ▲同銀 △4二銀
▲3八銀 △7二銀 ▲2五歩 △3三銀 ▲2七銀 △7四歩a
▲2六銀 (テーマ図)
△1四歩b (第1図)
a ・・・棒銀の場合は△7三銀型に構えるのが形
b ・・・△5四角を第13図より

角換わり棒銀です。プロの間ではほとんど指されなくなっている戦法ですが、決して棒銀側が悪くなるというわけでもありませんから、今でも有力な戦法です。受ける側も棒銀に対する正しい対応や、反撃のタイミングを知らないと苦労するはずです。このページでは、その辺りを中心に角換わり棒銀の一般的な定跡を紹介していきたいと思います。また、流行の一手損角換わりに対しても通用しますので(8五歩と8四歩の手の遅れは、この棒銀に関してはあまり影響がないから)、覚えておいて損はありません。
まず始めに、棒銀に対するちょっとした基礎知識を2つ紹介します。そのあとに、テーマ図から△1四歩(第1図)と進む定跡を記していきます。また、テーマ図より△7三銀とするのも有力です。こちらの定跡は第13図より書いていきます。

参考1:右玉に出来るか出来ないかの距離感

参考1図 参考2図

参考1図以下の指し手

▲1五歩 △同歩
▲同銀 △同香
▲同香 △1六歩
▲1八歩a △5二金
▲1二香成 △6二玉
▲2一成香 △8一飛
(結果図)
a ・・・▲1二成香は△1七歩成

棒銀に対して右玉に構えるのも有力な対策の一つですが、テーマ図の場合は上手くいきません。先手は無駄なく棒銀を繰り出してきているので、間に合わない格好です。もし先手が2手、何か自陣の整備に手を費やしてくれるなら右玉に構えることができます。
参考1図は右玉が可能な局面(先手はテーマ図から▲6八玉~▲5八金の2手自陣の整備に当てている)。参考2図のように進めば、棒銀の強襲は成立しておらず、後手良しです。一つ注意しておきたいのは▲8四香~▲9五角の間接王手飛車の筋がありますので、それを消す意味で必ず△5二金よりも先に△7三桂を指しておきましょう。
後手が角換わり棒銀を試みる場合、本ページで紹介する棒銀と比べて、手番による1手と、飛車先の歩を伸ばしていない1手の2手余裕がある計算ですから、先手は普通に右玉で構えられます。もちろん、右玉にできたからといって棒銀側が悪いということはありませんし、せっかくの先手番で右玉にするのは作戦的に勿体無いです。

参考2:棒銀に対する最強の対策

参考2図 参考3図

参考2図以下の指し手

▲2二角成 △同金
▲7七銀 △7二銀
▲3八銀 △6四歩
▲2五歩 △3三銀
▲2七銀 △6三銀
▲2六銀 △1四歩
▲1六歩 △7四歩
▲1五歩 △同歩
▲1五銀 △同香
▲同香 △1三歩(参考3図)

どうしても棒銀を避けたいのであれば、参考2図のように組むことで回避できます。以下▲2二角成に△同金とし、先手の作戦が明らかになるまでは、その金を2二に待機させておきます。ただし棒銀に対して、後手も十分戦えるというのが一般的な見解ですので、後手の指し方としては少し消極的です。
それでも尚、棒銀で端から攻めてきた場合、参考3図のように金によって端が補強されていますから、△1三歩と普通に受けて、先手の後続手がありません。棒銀失敗の図。
参考2図で▲2五歩は、△3三銀として角換わりではなく矢倉の戦いになります。このとき、先手は▲2五歩と形を決めてしまっている分だけ、作戦的には少し損。従って、参考2図より▲2五歩と指す人は少ないです。

端から打開を試みる

第1図 参考図

第1図以下の指し手

▲1六歩a △7三銀
(第2図)
a ・・・▲3六歩も一応ある

ちなみに「矢倉囲いに端歩を突くな」という格言はありますが、現状、後手玉は居玉のまま囲いに入っていませんので、△1四歩と指しても全く問題ありません。ただし、▲1六歩からの仕掛けは一応成立しますので、先手はここから打開を試みます。
▲1六歩のところ、▲3六歩からの攻めもありますが、以下△7三銀▲6八玉△6四銀▲3五歩△同歩▲同銀△8六歩▲同歩△8五歩(参考図)と十字飛車を狙いに反撃され、今ひとつ上手くはいきません。1局の将棋ですけれど、少し先手不満。途中の▲6八玉は必用な一手で、居玉のまま棒銀で攻めていくと、▲2四同飛のときに△1五角の王手飛車で将棋が終わってしまいますから注意してください。

先手仕掛ける

第2図 参考図

第2図以下の指し手

▲1五歩a △同歩
▲同銀 △同香
▲同香 (第3図)
a ・・・▲6八玉には△4四銀

第2図より、先手仕掛けるならこのタイミング。できれば▲6八玉と、1手自陣の整備を行いたいところですが、これには△4四銀と軽く受け流されて、棒銀の攻めが難しくなってしまいます。以下、▲1五歩△同歩▲同銀△同香▲同香△1六歩▲1八歩△3五銀(参考図)と進み、▲1二香成にも△3三桂と交わされて、先手の攻めは失敗。逆に、後手は次に△1九角という手があるので後手優勢になります。
従って、第2図からいきなり▲1五歩と仕掛けます。以下、△1五同歩に対して▲同銀から行くのが、棒銀の端攻めにおいての基本。▲1五同香からでは△1三歩と受けられて、2六の銀が立ち往生です。

最強の反撃△1六歩

第3図 参考図

第3図以下の指し手

△1六歩 (第4図)

第3図より△1六歩と反撃するのが定番の手順。ここ弱気に△1三歩だと、以下▲1二歩△2二銀▲1九香(参考図)と端に殺到されて、次の▲1一歩成~▲1三香成が受けづらい形です。ちなみに、△1三歩に▲1三香成なら、以下△同桂▲1四歩△2五桂▲1三歩成△3五角で後手やれます。

攻め合い

第4図 参考図

第4図以下の指し手

▲1八歩a △4四銀
▲2四歩 (第5図)
a ・・・▲1二香成は△1七歩成

第4図の△1六歩に対して、▲1二香成は以下△1七歩成▲同桂△1九角(参考図)として後手優勢です。▲2七飛と逃げるよりないですが、△1八銀でも△1六銀でも、飛車をいじめて調子良く攻められます。従って、△1六歩には一回▲1八歩と受ける必要があります。先手から見ると、これは大きなきかされです。
▲1八歩と受けたあと、次こそ▲1二香成がきますから、あらかじめ△4四銀として3三に桂馬を跳ねられるスペースを作っておきます。しかし、当然先手は薄くなった2筋を狙って▲2四歩から攻勢をかけます。

0手で角を打つ

第5図 参考図

第5図以下の指し手

△1九角a ▲2七飛b
△2四歩 (第6図)
a ・・・△2四歩を第9図より
b ・・・唯一の逃げ場所

第5図より、(1)△1九角(2)△2四同歩の2つの定跡があります。どちらも有力です。△2四同歩は第9図より記していきます。本手順、▲2四歩の瞬間に△1九角と打ちこむのがちょっとしたテクニック。単に△2四同歩と応じた進行と比べて、0手で1九に角が打てた形になります。ただし、1九に角が打てたからといって、必ずしも後手が得をしているとは限りませんが。
定跡ではないので詳しく書きませんが、△1九角▲2七飛に△1七歩成も有力です。以下、▲同歩△1八銀(参考図)▲2六飛△3五銀▲5六飛△2九銀不成で、後手わずかに指せそうです。また、途中の△2四歩に対しても▲1二角と打つ手があります。この変化に関しては第9図以降を参考にしてください。その局面と比べて1九に角が打てている分、後手が少し優位に運べます。

飛車の対処

第6図 参考図

第6図以下の指し手

▲2四同飛 △2三銀a
▲2六飛 △3五銀
▲5六飛 (第7図)
a ・・・△2三歩は疑問

第6図より▲2四同飛に△2三銀と固く受けます。飛車を下に引いてくれれば△2三歩でも良いですが、▲1四飛(参考図)と横に逃げるのが最善で、以下△1三銀▲3四飛△3三金▲3六飛と進み後手不満です。本手順、△2三銀からはほぼ必然一直線の進行です。

飛車成を恐れない

第7図 参考図

第7図以下の指し手

△2八角成 ▲5三飛成
(第8図)

第7図より△2八角成と攻めあうのが正解です。飛車成を嫌って△4二玉などと受けるのは▲3九金が好手で、以下△2八歩▲4八玉(参考図)と角を封じ込められて後手不満の戦いとなります。
第7図より△2八歩も、以下▲5三飛成△5二金▲5六龍△2九歩成▲4八金でいま一つ上手くいきません。次に▲5五香が厳しいので△4四桂と受けなければいけないのが辛いです。

激しい攻め合いに(形勢不明)

第8図 結果図

第8図以下の指し手

△5二歩a ▲5六龍
△2九馬 ▲2七香
△6二玉 ▲6八玉
(結果図)
a ・・・△5二飛は▲5六香

第8図の▲5三龍の王手には、△5二歩が最善の受け。△5二金だと、龍引かれたあとの香打ちが厳しいし、△5二飛とぶつけるのは▲5六香が厳しいです。
少し局面が落ち着いた結果図の局面。▲2三香成とすぐに清算してくれれば後手も戦えますが、▲6八玉と一回玉を戦場から遠ざけておくのが冷静な一手。▲2三香成の催促がこなければ、▲2二歩△3三桂▲1三香成から手を作り、そうなれば先手の指しやすくなります。よって、第8図より△2八馬と銀取りを催促して、勝負する展開となりそうです。

変化:△1九角に変えて△2四同歩

第9図 参考図

第9図以下の指し手

▲1二角 (第10図)

第9図は、前述の△1九角と打った手に変えて、自然に△2四同歩と応じた局面です。ここで普通に▲2四同飛なら、以下△2三銀に、(1)▲2八飛なら△3五銀として次に△1九角、(2)▲2六飛なら△3五銀▲5六飛△4五角(参考図)として、いずれも前述の変化と比べて後手が指しやすい展開となります。
従って△2四同飛としてくれれば後手十分の形になりますが、△2四同歩には▲1二角が厳しい一手です。馬は必ず作られてしまうので、後手も攻めあって戦います。

△1九角を打つタイミング

第10図 結果図

第10図以下の指し手

△2二金 ▲3四角成
△1九角 (第11図)

桂馬を取らせるわけにはいかないので第10図より△2二金の一手。▲3四角成と先手は馬を作り、対して後手も普通に指していては馬の存在の分だけ劣りますから、△1九角と攻め合います。
▲3四角成に対して、一回△3三金と受けてから次に△1九角を狙う順も考えられますが、△3三金以下、▲1六馬△1九角▲5八飛△2八銀▲6八玉△2九銀不成▲2八歩(参考図)と進み、後手の駒が捌けず、後手不利となります。途中、△2九銀成も▲3八馬と引かれて駄目です(このとき▲6八玉とあらかじめ逃げている一手が大きい)

馬を見切る

第11図 参考図

第11図以下の指し手

▲2七飛 △3三金
▲2四馬 △同金
▲同飛 △2二歩
(第12図)

第11図より▲5八飛と横に逃げるのも有力ですが、以下前述と同様に△2八銀▲1六馬なら△2九銀成で後手が指せます。この場合2二金型なので、どこかで△3二飛と応援が利くのも大きいです(従って△2八銀に▲4三馬△3三金▲2一馬の展開で一局の将棋)
本手順、△1九角と打ってから△3三金と受けるのが最善の受け。以下▲1六馬なら△2五銀▲1七馬△3六歩(参考図)と攻めて後手調子良いです。ということで、△3三金には▲2四馬と馬を見切り、2筋の突破を目指します。

▲8三香が厳しい(先手十分)

第12図 結果図

第12図以下の指し手

▲8三香 △3二飛
▲8一香成 (結果図)

第12図より▲8三香が厳しい一手。△同飛は▲2二飛成と急所に龍ができて先手勝ちです。また、▲8三香に△3三銀から飛車の取り合いも、駒の働きが違うので先手優勢です。やはり1九に打った角が働く展開にならないと後手苦しそうです。
結果図の局面は、先手良し。△3五角~△5七角成も、しっかり▲5八金打と受けておけば、後手からの後続手はありません。逆に先手は▲1二香成から着実に後手玉に迫っていけるので、気楽に攻めることができます。

分岐:△1四歩に変えて△7三銀

第13図 参考図

第13図以下の指し手

▲1五銀 △5四角
▲3八角a (第14図)
a ・・・すぐ▲2四歩は無理

第1図の△1四歩に変えて、△7三銀と駒組みを進めたのが第13図の局面。意味は▲1五銀と出させて、そこで△5四角と、棒銀を受けるのが狙いです。前述の定跡は1手の違いで、後手苦しくなる変化が多いですが、こちらはそれほど影響しません。融通の利く定跡なので、無難に済ませたい場合は有効です。
△5四角に、それでも▲2四歩なら△同歩▲同銀△2七歩で後手優勢。従って、△5四角に▲3八角と、その筋を受けるのが定番の定跡手順です。また、△5四角に対して例えば▲5八金は、以下△6四銀▲6六歩△1四歩▲2六銀△4二玉▲6七金△7五歩(参考図)と、逆に後手から攻められてしまいます。これでは何のために棒銀をやったのかわかりません。

覚えておきたい後手の手順

第14図 参考図

第14図以下の指し手

△4四歩 ▲2四歩a
△同歩 ▲同銀
△同銀 ▲同飛
△3三金 (第15図)
a ・・・▲6八玉を第18図より

後手は▲2四歩をどのように受けるかが大切です。第14図より△4四歩が、5四角と連動した受けになっています。この△4四歩に対して先手は(1)▲2四歩(2)▲6八玉の2つの定跡があります。棒銀を捌かせない△2二銀の変化は、▲6八玉のところを参考にしてください。
△4四歩は少し狙いのわかりにくい手ですが、2一の桂に紐をつけている意味があります。▲2四歩から駒を清算したあと、本手順の△3三金とする手がその効果で、ピッタリの受けになっています。ちなみに、▲2四歩△同歩▲同銀に△2七歩と叩くのは、以下▲同角△2四銀▲5四角(参考図)で効果なしです。
第14図より△2二銀と当たりを避けておくのも有力で定跡ですが、最初からこれを指す予定なら、別に△5四角を打つ意味もあまり無いので、省略します。

後手の逆襲

第15図 参考図

第15図以下の指し手

▲2五飛a △2四歩
(第16図)
a ・・・▲2八飛は△2七歩

第15図より一回▲2五飛として、△2四歩と打たせるのが好手順。単に▲2八飛と引いてしまうのは△2七歩(参考図)▲同飛で後手の指せる展開です。△2七歩に▲同角は△2二飛で後手優勢となります。
従って本手順、▲2五飛に△2四歩と進みます。△2四銀も考えられますが、やや重くて以下▲2八飛△2二飛▲6六銀となり、打った銀を捌くのに苦労させられます。単に△2四歩と打つのが後手の最善手。

飛車の逃げる場所

第16図 参考図

第16図以下の指し手

▲2八飛a △2二飛
▲2六歩 △4五歩
▲6六銀 (第16図)
a ・・・▲2六飛も有力

第16図は手の広いところ。▲5五飛と横に逃げるのは△2八銀で、次に△1九銀成から△1八角成を見せられ、忙しくなり先手不満の展開。▲2六飛は有力で、以下△2二飛▲5四飛に同じく△2八銀なら▲5四飛△3一角(参考図)で先手良しです。ただ、途中の△2八銀のところは自然に△2五歩と歩を伸ばして、わずかに後手指せそうです。
△2二飛に▲2六歩と手堅く受けて、とりあえず2筋の争いは一段落。△4五歩と角の働きを押さえ込んだ手に対して、▲6六銀から5四の角を目標に活路を見出します。

なんでも▲6五銀打(先手十分)

第17図 結果図

第17図以下の指し手

△6四銀 ▲7七桂
△4三角 (結果図)

第17図より△6四銀の一手。対して先手は▲7七桂と応援を送って、後手の角をいじめにきます。△7六角は▲6五銀打で先手良いですし、何もしなければ、やはり▲6五銀打があります。従って、△4三角は仕方のないところ。その△4三角と進んだ結果図の局面は、先手が攻勢に回れるので、まだこれからの将棋ですが先手十分です。結果図より強引に行くなら▲4六歩、自然に指すなら▲2七角と、角の活用が見込める展開になるのは大きいです。

変化:25手目▲2四歩に変えて▲6八玉

第18図 参考図

第18図以下の指し手

△2二銀a ▲2四歩
△同歩 ▲同銀
△2三歩 ▲1五銀
△6四銀 (第19図)
a ・・・△1四歩は後手不満

第18図は、▲2四歩とすぐ仕掛けないで一旦▲6八玉と居玉を避けた局面。先手としては常に指したい手ではあるものの少し疑問です。△1四歩なら、▲2四歩(参考図)から前述の進行と似たような形になりますが、それだと▲6八玉とした手が活きてくる展開です。この場合は△2二銀と局面を緩やかにして、△7五歩からの攻めを実現させるのが柔軟な指し方になります。
そうなれば、▲6八玉と指した手が戦場に近づいてしまった意味になるので、マイナスの手にできます。

後手が主導権を握る(後手優勢)

第19図 結果図

第19図以下の指し手

▲2六銀 △7五歩
▲同歩 △同銀
▲4六歩 △8四飛
▲2七角 △同角成
▲同飛 △4二玉
▲2八飛 △8六歩
(結果図)

第19図より▲2六銀と立て直しを図りますが、やはり後手の攻めの方が早く、△7五歩と仕掛けて完全に後手のペースとなります。結果図の局面では、攻めの銀の働きが顕著にあらわれていますし、後手優勢の局面です。

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