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ウソ矢倉

基本図

初手からの指し手

▲7六歩 △3四歩a ▲2六歩 △4四歩(テーマ図)
▲2五歩b △3三角 (第1図)

a ・・・矢倉に組む場合、普通は△8四歩
b ・・・ウソ矢倉を咎めにいく一手

4手目△4四歩から矢倉を目指す後手の作戦です。テーマ図の局面は、一般的には振り飛車の出だしであることから、「ウソ矢倉」という名前が付いています。他に「無理矢理矢倉」ということもあります。
先手の出方次第では飛車先の歩を突かづに矢倉囲いを完成させることができるため、そうなると作戦の幅が広がります。ただし、正しく対応されると、飛車先の歩を切られてしまい(2筋)、守勢に立たされるデメリットもあります。一方の先手としては、△8三歩型の矢倉戦は面白くありません。それを咎める意味で、図より▲2五歩△3三角の交換を入れて、2筋の歩を切りにいきます。

▲2五歩△3三角の交換を入れなかった場合

A図 B図
A図の▲4八銀はもちろん定跡で、至って普通の駒組みです。しかし、前述の通りここから矢倉に組まれた場合、先手は面白くありません。以下、△4ニ銀に▲2五歩と突いても△3三銀が間に合い、飛車先の歩を切ることはできなくなるからです。
万が一、A図から後手がウソ矢倉に組んできた場合の先手の対応としては、米長流急戦矢倉などの急戦形の将棋にして主導権を握りましょう。あくまでこれも一局の将棋です。

△8三歩型のメリット

C図 D図
具体的に△8三歩型のまま矢倉に組めると、どういうメリットがあるのか。あくまで一例ですが、△8三歩型だと袖飛車(=C図)や四手角作戦(=D図)などの戦法が有力です。袖飛車の場合、将来8三に角を打たれる心配ありませんし、四手角だと△8四歩△8五歩の2手省略することができます。もちろん、普通の駒組みも可能ですし、色々な駆け引きがうまれます。

▲2五歩を決めた場合の気になる変化

C図 D図
テーマ図の局面では、相手が居飛車でくるのか振り飛車でなのか断定できません。相手がもし振り飛車だった場合、▲2五歩を決めてしまうと向かい飛車にされる可能性が高くなります。従って、これの対策は必要です。
▲2五歩を決めてウソ矢倉を警戒するか、▲2五歩を決めないで向かい飛車を警戒するか、先手はあらかじめ考慮しておくと良いでしょう。基本的には、▲2五歩を決めて振り飛車にされたからといって損はありません。居飛車党の本格派を目指すなら、テーマ図では▲2五歩と指して△3三角を強要させるべきです。

ウソ矢倉を咎める▲5六歩

第1図 参考図

第1図以下の指し手

▲5六歩a △2ニ銀b
(第2図)
a ・・・▲4八銀を第10図より
b ・・・△2ニ飛を第13図より

第1図の時点でも、後手が居飛車なのか振り飛車なのかまだわかりません。ここで▲4八銀が最も多く指されている定跡で、こちらをお勧めします。この変化は第10図より記していきます。しかし、ウソ矢倉を咎めにいくのなら▲5六歩が優ります。
本譜▲5六歩のリスクは、向かい飛車にされたときの条件が前述E図よりも悪くなっていることです。▲5六歩が指されてあると▲4八玉とした瞬間に△2四歩(=参考図)を狙われてしまうためです。その変化は第13図より記します。本譜では、△2ニ銀からウソ矢倉を目指す将棋です。
本手順の▲5六歩はプロレベルの細かい戦術の話なので、無理してそこまで指す必要はありません。▲4八銀だと飛車先の歩を切れない場合もありますが、不満はありません。

飛車先の歩が切れる

第2図 参考図

第2図以下の指し手

▲7八銀 △3ニ金
▲4八銀 △5ニ金
▲7九角 △4三金右
(第3図)

▲7八銀は大事な一手。▲4八銀では△8四歩と突かれ、以下▲7七角△5ニ金右▲2ニ銀△4三金▲6八角(=参考図)と進み、次に▲2四歩から飛車先の歩は切れる形になりますが、本譜の順と比べると角を2回動かしているため手損になります。▲7九角から▲2四歩を狙うのが本筋です。
本譜▲7八銀にすぐ△4ニ角とは引くと▲4四角があるので、△5ニ金~△4三金右で4四の歩を守ります。その間に▲7九角と引いて、いつでも▲2四歩から飛車先の歩を切れる体勢を作っておきます。

飛車先の歩をすぐに切る

第3図 参考図

第3図以下の指し手

▲2四歩a △同歩
▲同角 △同角
▲同飛 △2三銀b
▲2八飛 △2四歩
(第4図)
a ・・・▲7七銀は第6図より
b ・・・△8八角を後述

第3図はちょっとした分岐点。▲2四歩とすぐ飛車先の歩を切りにいくか、▲7七銀として▲2四歩を保留しておくかの選択です。本手順の▲2四歩だと、角交換に必ず持ち込めることと、手数のかからない美濃囲いのまま速攻できるのでお勧めです。▲7七銀の変化は第6図より記します。
先手は2筋の歩を切ることに成功。対して、後手は△2三銀と立ち、銀冠にして厚みを築いて飛車を押さえ込みにいきます。△2三銀のところ、△3三桂もありますが、以下▲2八飛△2三歩(=参考図)と進み、一局の将棋ながら先手に不満はありません。また、本譜△2三銀では、△8八角と打ち込む定跡もあります。こちらは後述します。

△8八角から飛車を取りにいく変化

G図 H図
△8八角は香車を手に入れて、△2三香から飛車を捕獲しにいく狙い。G図以下、▲7七角△9九角成▲同角△2三香▲同飛成△同銀▲3八金(=H図)と進みます。後手上手くやったかのように見えますが、9九の香車が駒台に乗った形で、飛車・角交換ながら先手優勢です。
H図の局面、例えば△6ニ銀には▲4六歩から▲4五歩の単純な攻めが受けづらい形です。▲4六歩に△3三桂も、構わず▲4五歩です。△同桂なら▲4六歩、△同歩なら▲4四香が厳しいです。なので、飛車の横利きを通しておかないと、角と香を手持ちにしている先手の攻めを受けるのが難しい局面となっています。

駒組み

第4図 参考図

第4図以下の指し手

▲6八玉 △6ニ銀
▲7九玉 △5四歩
▲8八玉 △5三銀
▲6六歩 △4一玉
▲5八金右 △3一玉
▲6七金 △1四歩
▲1六歩 △4五歩
(第5図)

2筋の歩を切ったところで、お互い駒組み。△8四歩~△8五歩と飛車先の歩を伸ばしてきた場合は、▲7七銀から矢倉に組み構えるのも無難ですが、ここは▲6八角(=参考図)と打ってしまうのが良いです。先手だけ角を手放してしまって損のようですが、▲8八玉と囲ってから▲2四角と強襲する攻めがあります。角銀交換になりますが、後手歩切れで2筋を受けるのが難しい形です。
後手は攻め合いには持ち込めないので、△4五歩と4筋の位を取って第5図。厚みを築いて飛車の働きを抑えこみにいく狙いです。

先手の攻勢(先手十分)

第5図 結果図

第5図以下の指し手

▲3六歩 △4四銀
▲3七銀 △7四歩
▲2六銀 △3三桂
▲3七桂 △6四角
▲2九飛 △8八玉
▲2五歩 (結果図)

銀冠に対しては▲2六銀・▲3七桂が一つの理想形。それ以外の駒組みだと、銀冠が厚く攻略するのに苦労します。万全の体制から仕掛けた結果図の局面は、まだこれからの将棋ですが、先手のかなり勝ちやすい将棋です。矢倉よりも低くかまえた美濃囲いも、この局面に限っては優れています。
結果図以下、△2五同歩▲同桂△2四歩▲3三桂成△同銀▲1五歩△同歩▲3五歩と端を絡めて攻めていけば、後手玉攻略の糸口が掴めるかと思います。角を手持ちにしているのも大きいですね。

分岐:▲2四歩に変えて▲7七銀

第6図 参考図

第6図以下の指し手

△4一玉 ▲7八金
△5四歩 ▲6九玉
△6ニ銀 ▲2四歩
(第7図)

第6図は▲2四歩を保留して、▲7七銀から矢倉に組む指しかたです。例えば第6図より△4ニ角と引けば、以下▲2四歩△同歩▲同角(=参考図)と進み、△同角なら△4ニ角と引いた一手を無駄にさせることができます。従って参考図の局面、後手は角交換するのは面白くないので、△3三桂として菊水矢倉で対抗するのが自然です。
本譜は△6ニ銀としたところで、▲2四歩と飛車先の歩を切りにいくのが妥当でしょう。以下、前述の変化と同様に銀冠に構えて第7図。

先手の失敗例

G図 H図
あまり▲2四歩を保留しすぎると、後手に厚みを築かれてしまって不利になってしまう恐れもあります。I 図では、次の△3五歩~△3六歩を受ける手段が難しいです。I 図以下、▲2六飛△6ニ角▲6七金右△3五歩(=J図)と、押さえ込まれてしまいます。
菊水矢倉に対して早繰り銀や棒銀では効率が悪いので、▲2四歩はある程度早めに決めてしまって、後手の作戦を明確にしておいた方が先手も指しやすいと思います。

自陣に角を打つ定跡

第7図 参考図

第7図以下の指し手

△2四同歩 ▲同角
△同角 ▲同飛
△2三銀 ▲2八飛
△2四歩 ▲1四歩
△1六歩 ▲6八角
△5一角 (第8図)

2筋の歩を切ることで、とりあえず先手としては不満のない展開です。▲2八飛△2四歩のあと、普通に角を手持ちにしたまま駒組みするのも一局の将棋ですが、本譜では▲6八角と打ちます。ウソ矢倉特有の定跡です。勿体無いようですが、例えば普通に△5三銀には▲2四角と強襲する手が成立します。以下、△同銀▲同飛(=参考図)のとき、後手歩切れで△2三歩と打てないのが辛いところです。
その▲2四角の強襲を防ぐために、△5一角(=第8図)もしくは△4ニ角と受けるのは仕方のないところ。この角の打ち合いは先手の方が攻めに利いている分わずかに得です。
参考図の局面は、「二枚換えは歩ともせよ」という格言が当てはまる珍しいケースです。一般的には大駒と、歩の入った2枚換えは損なやり取りになるので避けましょう。

駒組み

第8図 参考図

第8図以下の指し手

▲5八金 △5三銀
▲6六歩 △7四歩
▲6七金右 △3一玉
▲7九玉 △3三桂
▲8八玉 △2ニ玉
▲3六歩 △8四歩
▲3七銀 △8五歩
▲4六角 △6四歩
(第9図)

丁寧に受けられるとさすがに先手も早い攻めがないので、ここからお互い駒組みに。しっかり囲ったあとは▲3六歩から攻めの体勢を作っていきます。▲3七銀△8五歩に一回▲4六角と飛車取りに当てるのが大切な一手。すぐ▲2六銀と出るのは△7三角と牽制されて、以下▲4六角△同角▲同歩△4七角(=参考図)と反撃されて先手不満の展開です。
▲4六角に△7三角とぶつけるのは、以下▲同角△同桂▲7五歩と桂頭を攻めて先手良し。なので、本譜▲4六角に△6四歩と受けて第9図です。

仕掛けに成功(先手ペース)

第9図 結果図

第9図以下の指し手

▲2六銀 △4五歩
▲5三角 △7三角
▲3七桂 △6五歩
▲2九飛 △6六歩
▲同角 △4四銀
▲2五歩 (結果図)

△6四歩を見て▲2六銀と進出。△4五歩から△7三角と先手の攻めを牽制しますが、結果図の▲2五歩と仕掛けた局面は先手ペースです。ただし、これで押し切れるということはなく、これからの将棋となります。
いずれにしても、2筋の歩を切ることができると先手が主導権を握る形になりやすいので、受けに自信がないと後手をもって指しこなすのは大変でしょう。

変化:▲5六歩のところで▲4八銀

第10図 参考図

第10図以下の指し手

△8四歩 ▲7八銀
△8五歩 (第11図)

第10図は▲5六歩に変えて▲4八銀とした局面。こちらの方が実戦例も多く、自然な指し手です。ただし、▲5六歩よりも劣る点として、飛車先の歩を切れなくなってしまうことがあります。本譜はその2筋の歩を切らさない順を紹介していきます。
図で、もし△3ニ金なら▲5六歩(=参考図)として、前述の定跡に合流させることができます。本譜、△8四歩~△8五歩と決めておくのが、2筋の歩を切らせないようにする定跡です。
参考図の局面はまだウソ矢倉だと決め付けるのは尚早で、どちらかというと△4ニ飛から立石流でくる可能性の方が高いと思います。

先手は2筋の歩を切れない

第11図 参考図

第11図以下の指し手

▲7七銀a △2ニ銀
▲5六歩 △4ニ角
▲7八金b △3三銀
(第12図)
a ・・・▲7七角も無理
b ・・・早囲いは有力

△8五歩▲7七銀の交換を入れることによって、△4ニ角といつでも引けるようにしています。これによって、▲2四歩が入る前に△4ニ角~△3三銀が間に合う形になります。前述の変化だと、先手の角が素通しなので、4四の地点を守るため△5ニ金右~△4三金右の2手必要でした。
よって、▲7九角を急いでも△3三銀とされて2筋の歩は切れません。諦めて▲7八金から駒組みを行います。また、後手はすでに角に2手費やしているため、少し欲張って▲7八玉(=参考図)から早囲いを目指すのは有力です。

▲7七角として無理矢理2筋の歩を切りにいくのは

K図 L図
第11図で▲7七角とするのも、以下△2ニ銀▲5六歩△3ニ金▲6八角△4ニ角▲2四歩△同歩▲同角△8六歩(=L図)で、お互い飛車先の歩が切れる将棋となり、先手不満です。
▲7八銀の一手を省略するのも、▲6八角と引いた瞬間に△4五歩と突かれて駄目です。△9九角成を受けるためには▲7七角か▲7七桂としなければならず、完全に先手失敗です。

先手は作戦勝ちを狙う(互角)

第12図 参考図

第12図以下の指し手

▲6九玉 △3ニ金
▲5八金 △5四歩
▲6六歩 △5ニ金
▲7九角 △4一玉
▲3六歩 △4三金右
▲3七銀 △6ニ銀
▲3五歩 (結果図)

2筋の歩を切れなくなった代わりに、先手は▲3七銀から▲3五歩(=参考図)と3筋の歩を切りにいきます。3筋の歩を普通に切ることができれば、銀や桂馬が使いやすくなるので、先手の作戦勝ちが見込めます。後手がこれを牽制するなら、▲3七銀のところで△6四角と出るのがセオリーですが、既に角に2手使っているため心理的に指しにくい面があります。
結果図はまだ形勢うんぬんの局面ではありませんが、やはり先攻できる先手の指しやすい将棋と言えそうです。この展開を後手嫌うなら、△6ニ銀のところでは△7ニ銀として、棒銀で攻め合いを目指す戦いになります。

分岐:△2ニ銀のところで△2ニ飛

第13図 参考図

第13図以下の指し手

▲6八玉 (第14図)

第13図は▲5六歩に△2ニ飛と向かい飛車にした局面。先手としてはこの変化が一番気になる順です。ここで、とても怖いですが▲6八玉と囲いにいくのが本筋の一手です。無難に駒組みするのなら▲4六歩(=参考図)ですが、これだと持久戦にはなりにくく、急戦の激しい戦いが予想されます。
参考図の▲4六歩は、▲6八玉としたときに△2四歩▲同歩△同角が王手にならないように受けた手です。向かい飛車に対して、よくある受け方の一つです。

早くも終盤戦に突入

第14図 参考図

第14図以下の指し手

△2四歩 ▲同歩
△同角a ▲同飛
△同飛 ▲1五角
(第15図)
a ・・・△同飛は普通の向飛車

第14図より△4ニ玉や△6ニ玉なら普通の向かい飛車の将棋です。本譜の△2四歩は▲6八玉を咎める一手で激しい戦いになります。以下、▲同歩△同角に(1)▲7八玉は△5七角成で先手不利、(2)▲5八玉も△2七歩(=参考図)で後手優勢です。参考図より▲同飛なら△5七角成▲同玉△2七飛成と飛車を抜く筋が強烈です。向かい飛車という戦法はこの筋を常に狙っているので、心得ておきましょう。
従って、△2四歩▲同歩△同角には▲同飛と取るよりありません。瞬間、飛車・角交換になりますが、▲1五角の準王手飛車で切り返します。

飛車を打って受ける

第15図 参考図

第15図以下の指し手

△2五飛打a ▲2四角
△同飛 ▲2八歩
△3五角 (第16図)
a ・・・△2七飛打もある

第15図は△2五飛打として受けるのが最善手。△2七飛打だと龍は作れますが、以下▲2八歩△2五飛成▲2四角△同龍▲4四角(=参考図)と進み先手やや有利。参考図より、角成を防ぐため△3三角か△3五角と受けますが、先手は飛車が持ち駒なのと、1歩得が主張です。
本手順▲2八歩と飛車の成り込みを受けた手に対し、△3五角と攻防に打ちます。ここ△3五歩では▲7八玉△5七角▲6六角で攻めが続きません。戦いが長引けば持ち駒の飛車と角の差が出てきますから、後手は忙しい局面なのです。

激しい攻め合い(形勢不明)

第16図 結果図

第16図以下の指し手

▲7八玉 △5七角成
▲4四角 △4七馬
▲1一角成a △2九馬
▲4八銀 (結果図)
a ・・・▲3八金は△同馬

▲7八玉に△5七角成で馬は作れますが、先手も▲4四角と出る手が調子良いです。△4七馬に対して、▲3八金と受けるのは、以下△同馬▲同銀△2八飛成で、銀取りを受けるのが難しい形。なので、攻め合って結果図の局面。形勢は難解ですが、玉形の差の分先手の勝ちやすい将棋だと思います。
結果図より△1一馬なら▲5五飛で、飛車成と▲2五香を狙って先手指せそうです。なので、一回△6ニ玉と受けてどちらが早く寄せきれるかの戦いになりそうです。
第1図で▲5六歩は最強の手ですが、この向かい飛車の変化があるため、ある程度対策を考えておかないと厳しいです。なので、第1図で▲4八銀(=第10図)で駒組みする方が手堅くてお勧めです。

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